盲ろうについて ABOUT DEAFBLINDNESS

人工内耳を装用し弱視用メガネをかける盲ろう児

視覚と聴覚の両方に障害を有する状態を「盲ろう」と言いますが、その障害の状態や程度は様々です。目と耳という主要な感覚機能に障害を併せ有するため、情報入手・コミュニケーション・移動など、さまざまな場面で困難が生じます。

盲ろうの障害の状態

見え方と聞こえ方の組み合わせによって、

  • 全く見えず聞こえない状態の「全盲ろう」
  • 全く見えず聞こえにくい状態の「全盲難聴」
  • 見えにくく聞こえない状態の「弱視ろう」
  • 見えにくく聞こえにくい状態の「弱視難聴」

という4つのタイプに大別されます。

盲ろうの障害の状態の分類図

また、視覚障害・聴覚障害それぞれの発症時期に基づき、以下のように区分されます

先天(早期)盲ろう
先天的、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の両方に障害を発症する
盲ベース盲ろう
視覚障害が先に発症し、その後聴覚障害が発症する。
ろうベース盲ろう
聴覚障害が先に発症し、その後視覚障害が発症する。
中途(後期)盲ろう
先天的、乳幼児期に視覚・聴覚障害がなく、成人期以後に視覚と聴覚の両方に障害を発症する。

障害カテゴリーとしての盲ろう

日本においては、法的に「盲ろう」の定義が確立しておらず、身体障害の種類と等級を規定している現行の「身体障害者福祉法」では、視覚障害および聴覚障害の両方の障害を併せ有した「盲ろう」に関する規定はありません。しかし、盲ろうがもたらす独自の困難、ニーズ、教育に必要とされる高い専門性ゆえに、アメリカ、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、イギリス、フランスなどでは盲ろうを独自の障害として位置付けています。

「障害者の権利に関する条約」の中での盲ろうに関する記述を以下に示します。
盲ろうについては、deafblindとハイフォンなしで明記されており、日本政府の公訳では、以下のように明記されています

第二十四条教育 3

(c) Ensuring that the education of persons, and in particular children, who are blind, deaf or deafblind, is delivered in the most appropriate languages and modes and means of communication for the individual, and in environments which maximize academic and social development.

(c) 盲人、聾者又は盲聾者(特に盲人、聾者又は盲聾者である児童)の教育が、その個人にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段で、かつ、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において行われることを確保すること。

盲ろう児・者の数

厚生労働省の平成24年度障害者総合福祉推進事業「盲ろう者に関する実態調査報告書」(平成25年3月 社会福祉法人全国盲ろう者協会)によれば、盲ろう者は、全国に14,000人ほど存在することが確認されています。この数字は、視覚障害と聴覚障害の両方の障害が身体障害者手帳に記載されている人の数ですから、実数は、もっと多いことが予測されます。また、手帳が交付されている盲ろう者の8割近くが65歳以上となっています。

盲ろうの子どもたちの数については、国立特別支援教育総合研究所が平成29年度に実施した「特別支援学校における盲ろう幼児児童生徒の実態調査」の結果を示します。本調査は、全国の特別支援学校を対象として、視覚と聴覚の両方に障害のある「盲ろう」幼児児童生徒の障害の状態、コミュニケーション方法、関わっている教職員のニーズなどについて調査したものです。調査の対象となる盲ろう幼児児童生徒の視覚障害及び聴覚障害の状態については、特別支援学校の対象となる「学校教育法施行令22条の3」を基準とし、視覚障害及び聴覚障害の他に、知的障害、肢体不自由、病弱など他の障害を併せ有する幼児児童生徒も対象としました。

在籍している学校数

166

以下、学校種の内訳

  • 視覚28
  • 聴覚20
  • 知的27
  • 肢体26
  • 病弱5
  • 知的・肢体不自由併設26 など

在籍する盲ろう幼児児童生徒数

315が特定

内訳

  • 全盲ろう11名
  • 全盲難聴61名
  • 弱視ろう17名
  • 弱視難聴157名
  • 測定不能・不明等69名

盲ろう幼児児童生徒の障害の状態について

視覚と聴覚以外にも障害がある

271(86.0%)

内訳

  • 知的・肢体不自由:117名
  • 知的:56名
  • 知的・肢体不自由・病弱:40名
  • 肢体不自由:32名 など

医療的ケアが必要である

136(43.2%)

内訳

  • 経管栄養:95名
  • 口腔・鼻腔内吸引:67名
  • 気管切開部の管理:25名 など

※複数のケアを必要とするケースもあります

在籍する盲ろう幼児児童生徒数の分類図

盲ろうの原因疾患について

盲ろう児(child of deafblindness)は、100,000人に2~3人の割合といわれています(the Gallaudet Research Institute,2013:2011-2012、the Colorado Department of Education,2007)。
一人ひとりの見え方、聞こえ方もさまざまですが、盲ろうになる原因もさまざまです。

盲ろうとなる可能性のある主な疾患は、以下の通りです。
  • ・チャージ症候群
  • ・コルネリアデランゲ症候群
  • ・スティックラー症候群
  • ・ピエールロビンシークエンス
  • ・トリーチャーコリンズ症候群
  • ・ゴールデンハー症候群
  • ・クルーゾン症候群
  • ・アペール症候群
  • ・ファイファー症候群
  • ・アントレー・ビクスラー症候群
主に進行性で盲ろうを呈する可能性のある疾患
  • ・アッシャー症候群
  • ・ミトコンドリア病
  • ・神経線維腫症I型(NF1)
  • ・神経線維腫症II型(NF2)
  • ・コケイン症候群
  • ・スタージ・ウェーバー症候群
  • ・ダンディー・ウォーカー症候群
  • ・アクセンフェルト・リーガー症候群

また、米国全域調査(視覚聴覚二重障害発症の疫学的統計(0~21歳,米国,2016)では、以下の結果が示されています。

  • 遺伝性症候群および障害:44.4%

    チャージ症候群、ダウン症候群、アッシャー症候群(Ⅰ,Ⅱ, Ⅲ)、スティラー症候群、ダンディウォーカー症候群、ゴールデンハール症候群、その他

  • 先天性合併症:14.3%

    サイトメガロウイルス(CMV)、水頭症、小頭症、その他

  • 出生後の非先天性合併症:11.8%

    窒息、重度の頭部損傷、髄膜炎、その他

  • 未熟児の合併症:10.7 %
  • 病因不明 18.8 %

盲ろうの原因疾患については、「視覚聴覚二重障害の医療 ~盲ろう医療支援情報検索ネット~」先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル(第1版) より転載

TOPに
もどる