研究会概要 about

植物の新芽を手のひらで包むイメージ
盲ろう児・者の教育・福祉の
充実を目指して(アピール)

「全国盲ろう教育研究会」は、2003年に発足した目と耳の両方に障害を併せ有する「盲ろう児・者」の教育及び福祉に関わる多様な事柄を研究し、その向上に寄与することを目的とする、日本で初めての全国的な研究会です。

会員は、盲ろう教育にかかわる学校教員だけでなく、盲ろう当事者、盲ろう児・者の家族、盲ろうの療育・リハ・医療・通訳介助等にかかわる専門家および研究者等、盲ろう児・者の教育と福祉に貢献し、情報を分かち合う意欲のある人々を対象としています。会員の多様性と地理的多様性は、研究活動を豊かにする原動力になると考えています。

活動

研究会の活動は3つの柱からなっています

  • 日本各地の会員の実践や研究を
    互いに分かち合うこと
  • 会員の研修の機会を
    つくること
  • 海外の動向を含めた
    盲ろうに関する最新の情報を
    会員に提供すること

理念

視覚と聴覚の両方に障害を併せ有する盲ろう児・者の教育及び福祉に関わる多様な事柄を研究、実践、交流し、全国に点在する多様なニーズを有する盲ろう児・者の教育・福祉の向上に努めていくこと、また、盲ろう児・者の教育・福祉に携わる教職員の研修システムの開発・普及を進めるとともに、保護者をはじめとする家族への支援体制の充実を図っていくことを理念としています。

目と耳の両方に障害がある「盲ろう者」は、2001年(平成13年)厚生労働省身体障害者実態調査によれば、全国で13,000人いると推定されています。このうち、盲学校、聾学校、養護学校、難聴幼児通園施設、盲幼児通園施設などに在籍している幼児・児童・生徒は、338人であることが分かっています(1998年国立特殊教育総合研究所の調査による)。
これらの幼児・児童・生徒たちは、それぞれの教育機関に在籍はしているものの、「盲ろう」という障害が法的に定義されていないわが国においては、「重複障害」という大まかな枠の中で取り扱われるだけで、適切なカリキュラムも確立されておらず、教員研修も行われてきませんでした。

このような状況の中で、今後のわが国の特殊教育の方向を示すものとして、2001年(平成13年)に公表された『「21世紀の特殊教育の在り方について」~ 一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について ~(最終報告)』(21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議、2001年3月15日)では、特に「盲ろう」重複障害を取り上げ、「盲、聾の重複障害のように特別なコミュニケーション手段が必要な場合(中略)には、特に障害の状態に配慮しながら指導する必要がある。」と述べ、このため「教員の専門性の向上や成果の普及、教育相談の充実を図る必要がある。」と提言されています。

わが国においても、過去、何人かの先人達によって盲ろう教育への取り組みがなされた歴史がありました。しかしながら、盲ろうという希少障害の特性もあって、組織的な活動が充分継続されないまま現在に至っています。従って、今なお、それぞれの教育現場においては、事例も情報も少ない中で、試行錯誤の連続であるといって過言ではありません。
そうした中で、こども達は時を待たずに成長していきます。
ちょっとした情報が、盲ろうという障害を有するこども達の成長にどれほど役立つか分かりません。盲ろう教育という共通のテーマを持った教師・研究者が一堂に集い、情報交換の出来る場が長い間待ち望まれてきました。

このような背景のもとに、私たちはここに「全国盲ろう教育研究会」を設立し、わが国の盲ろう教育を、長かった黎明期から更に一歩をすすめて、学校教育のレールの上に乗せていくための努力をすすめていきたいと考えます。

日本で初めて盲ろう児教育が行われたのは、1949年(昭和24年)のことでした。当時の山梨県立盲唖学校校長堀江貞尚が、県下の盲児とろう児について実態調査をする過程で、盲ろう児に出会ったことから始まっています。これをきっかけに、1952年(昭和27年)には東京大学教授梅津八三らを中心とする「盲聾教育研究会」がつくられ、盲ろう教育研究の端緒が開かれました。現場の教師・寮母や研究者の協力による山梨県立盲学校の盲ろう児教育は、1971年(昭和46年)まで続けられました。その後、教師・研究者らによって「日本盲聾児を育てる会」が結成され、全国各地の盲ろう児やその家族、教師らの結束を図る試みがなされました。1971年(昭和46年)に設立された国立特殊教育総合研究所(現国立特別支援教育総合研究所)には、盲聾教育研究室が設けられ、国立久里浜養護学校や財団法人重複障害教育研究所をはじめ、いくつかの盲学校、聾学校においても、盲ろう児に対する教育の貴重な試みが実践されてきました。しかし、個々の研究や教育実践を共有する場がなかなか持てないまま、時が推移しました。

盲ろう教育をめぐるもう一つの動きとして、筑波大学附属盲学校を経て、東京都立大学へ進んだ盲ろう青年の支援活動をきっかけに、1991年(平成3年)に社会福祉法人全国盲ろう者協会が設立されたことがあげられます。これによって、日本でも、行政レベルによる盲ろう重複障害者に対する施策が、ようやくスタートすることになったわけです。
全国盲ろう者協会では、様々な盲ろう福祉施策に取り組む一方で、盲ろう教育に経験のある教師・研究者を集めて、「盲ろう教育手法開発委員会」を作り、盲ろう教育の研究にも取り組みました。そして、1991年(平成3年)、これらの委員の方々の努力によって「盲ろう教育研究紀要」が発刊される運びとなり、今日までに6号を数えるに至っています。
この委員会のメンバーによる活動は、その後、紀要の発行だけでなく、全国の盲ろう児とその親によるワークショップなど、様々な活動を展開するようになりました。全国盲ろう者協会の後援によるこれらの活動や、1993年(平成5年)と1998年(平成10年)に国立特殊教育総合研究所が全国の学校を対象に行った実態調査によって、学齢期にある盲ろう児童・生徒の実態も、徐々に明らかになってきています。それとともに、少しずつではありますが、全国に散らばる教師達が、お互いに情報交換を試みる事例も増えてきています。

このように、時代の大きなうねりが、ようやく盲ろう教育にも光明を差しかけてきているとき、私たち盲ろう教育に携わる現場の教職員と研究者は、「全国盲ろう教育研究会」を設立することと致しました。多くの皆様方にご賛同いただき、ご支援いただきますよう、切にお願い申し上げます。

平成15年5月20日

賛同人(50音順) ※役職・組織は設立当時のもの 私たちは、「全国盲ろう教育研究会」の設立趣旨に賛同します。

秋谷 義一(全国聾学校長会会長 東京都立立川ろう学校長)
飯野 順子(全国肢体不自由養護学校長会顧問 筑波大学附属盲学校長)
井上 早苗(東京女子大学心理学科教授)
内田 芳夫(鹿児島大学教育学部教授)
大沼 直紀(筑波技術短期大学学長)
落合 俊郎(広島大学大学院教育学研究科教授)
神尾 裕治(都立久我山盲学校長)
川住 隆一(東北大学大学院教育学研究科教授)
小島 純郎(社会福祉法人全国盲ろう者協会理事長)
斎藤 佐和(筑波大学附属聾学校長)
鈴木 重男(北海道立特殊教育センター所長)
高橋 信雄(愛媛大学教育学部教授)
高橋真由美(愛媛十全医療学院言語聴覚学科長)
土谷 良巳(上越教育大学大学院附属障害児教育実践センター教授)
寺島 彰(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所・障害福祉研究部長)
徳光 裕子(全国盲ろう難聴児施設協議会会長)
中野 泰志(東京大学先端科学技術研究センター特任教授 慶應義塾大学経済学部教授)
中山 喜崇(長野県花田養護学校教諭)
西川 公司(国立久里浜養護学校長)
塙  忠蔵(学校法人横浜訓盲学院長)
広瀬 信雄(山梨大学大学院教育学研究科教授)
福島 智(東京大学先端科学技術研究センター助教授社会福祉法人全国盲ろう者協会理事)
古澤 立彦(山梨県立盲学校長)
細村 迪夫(独立行政法人国立特殊教育総合研究所理事長)
松木 健一(福井大学教育地域科学部助教授)
皆川 春雄(全国盲学校長会会長 東京都立八王子盲学校長)
山内 進(社会福祉法人光道園園長)
山縣 浩(宮城教育大学障害児教育講座教授)
山本 衡(東京都立立川ろう学校教諭)
吉田 正行(全国盲ろう者団体連絡協議会設立準備委員会委員長)

「全国盲ろう教育研究会」設立準備会(50音順)
伊藤 泉(難聴幼児通園施設みやこ園)
今井二郎(筑波大学附属聾学校)
塩谷 治(筑波大学附属盲学校)
柴崎美穂(東京都心身障害者福祉センター)
中澤恵江(独立行政法人国立特殊教育総合研究所)
星野 勉(横浜市立上菅田養護学校)
星 祐子(筑波大学附属盲学校)
三科聡子(学校法人横浜訓盲学院)

第21回本研究協議会・総会において第2代会長を仰せつかりました雷坂浩之と申します。まずは、今回の研究協議会の冒頭のご挨拶において、中澤惠江先生の会長を辞したいという意向について大変残念な思いで受け止めました。そしてこれまでの20年間、会長として本研究会を牽引され、我が国の盲ろう教育の発展に貢献されてきたことに対して心から敬意を表したいと思います。
私は、研究会発足当時から、本研究会のホームページの作成や管理等に携わらせていただきました。近年では、本研究会の副会長として、研究協議会の開催等に関わらせていただくようになりました。
・・とは言いましても、本業は大学教員であることから、あまり本研究会の活動に貢献できたとは言えません。
しかし、ここ何年間か文部科学省の研究委託事業等に協力させていただく中で、全国の盲ろうの子どもたちの在籍する学校などを訪問する機会がありました。それぞれの地域において盲ろうの子どもたちの様子を拝見しながら、教育や指導・養育に携わる先生方や保護者の方々の悩みなどを伺うことで、盲ろうの子どもたちを巡っては解決せねばならない様々な課題が山積していることを実感しています。
この度、会長を受けるに当たっては、こうした課題の解決に向けて、運営委員や事務局のメンバーの協力をいただきながら、中澤先生の業績を汚さぬよう頑張る所存です。会員の皆様におかれましても、これまで以上にご支援ご協力の程どうぞよろしくお願いいたします。
(2023年8月)

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本研究会役員・事務局員

  • 会長 雷坂 浩之(筑波大学附属学校教育局)
  • 副会長 上田 淳一(社会福祉法人 新潟地区手をつなぐ育成会 あすなろ福祉園)
    柴崎 美穂(東京都心身障害者福祉センター)
    星野 勉 (NPO法人わくわくわーく)
  • 事務局長 星  祐子(東京都盲ろう者支援センター)
  • 会計 小野 彰子(東京大学バリアフリー支援室)
  • 会計監査 左振 恵子(帝京平成大学)
    森  貞子(盲ろう児とその家族の会 ふうわ)
  • 事務局員 加藤 敦 (国立特別支援教育総合研究所)
    亀井 笑 (筑波大学附属視覚特別支援学校)
    塚田 直也(筑波大学附属視覚特別支援学校)

(所属は2024年6月現在)

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