2023年度全国盲ろう教育研究会 第21回研究協議会の報告

 2023年8月5日(土)、全国盲ろう教育研究会第21回研究協議会を教育・福祉・医療関係者、
盲ろう当事者、保護者、学生など、様々な職種、立場の方100名程の参加を得て、オンライン
にて、以下の内容で開催いたしました。

〇開会式
 当研究会会長  中澤 惠江より挨拶
 国立特別支援教育総合研究所 中村 信一理事長よりご挨拶をいただきました。

〇実践報告
 以下の実践報告T、U、Vでは、盲ろう児の早期支援、学校教育の段階、そして学校教育を
終えて社会人となった盲ろう者の就労という、各ライフステージでの支援や教育活動等の様子
を紹介いただきました。
  実践報告T 
   早期支援「パンダ教室」の取組
            大阪府立大阪南視覚支援学校 幼小学部  教諭   小北 千晶 氏
                               教育支援室 指導教諭 村江 鉄平 氏
  実践報告U  
   小学部入学から今日までのA児との関わりの中で学んだこと、大切にしてきたこと
       −「〜が楽しい」、「〜が大好き」といった思いがことばの育ちの根っこ−
                    筑波大学附属視覚特別支援学校 教諭  塚田 直也 氏
  実践報告V   
   地域作業所わくわくわーくの素敵な仲間を紹介します
                      地域作業所わくわくわーく    職員  長澤 陽子 氏

〇情報提供    
   盲ろうの方々への支援情報に関する、医療に従事する企業としての取り組み
                    日本調剤株式会社   薬剤企画部長  長島 雄一 氏

〇リレートーク 
 盲ろうに関する多様な報告を持ち合い、情報を共有、交流できるような場として、設定しまし
た。以下の5件の報告がありました。今年度は、2名の盲ろう当事者が報告くださったことが特
徴的なことでした。
  1.山梨盲ろう教育資料デジタル・アーカイブ化報告
                                  山梨県立盲学校   河西 晃 氏
  2.盲ろう教育関連 新刊本の紹介
    「特別支援教育免許シリーズ 複数の困難への対応」について
                                横浜訓盲学院    中川 はすみ 氏
                               徳島聴覚支援学校  長尾 公美子 氏
  3.近況報告
                                              おざき まさ 氏
  4.私の高校生活
                                                田中 凛 氏
  5.令和5年度文部科学省委託事業「特別支援教育に関する実践研究充実事業」
          (盲ろう児を担当する教師に対する研修の在り方)概要
                            筑波大学附属学校教育局   雷坂 浩之 氏

〇講演   
   盲ろう教育と医療機関におけるロービジョンケア −教育と医療の連携−
   杏林大学医学部付属病院アイセンター ロービジョンルーム 
                                  視能訓練士   新井 千賀子 氏 
   新井氏からは、以下の内容について、具体的に分かりやすくお話しいただきました。
 1)ロービジョンとはどういう状態か?
 2)ロービジョン(視覚障害)と聴覚障害が重複するとどうなるか?
 3)ロービジョンケアについて
     杏林アイセンターのロービジョンケアの状況
     ロービジョンケアの現状と課題
 4)教育との連携
     連携とはどういうことか?
     連携における眼科医療領域での動き
     教育との連携の課題
 5)ロービジョンケアと盲ろうのケアについて
     現状と今後の課題と未来
     かゆいところに手が届くケアにするには

〇閉会式   
 当研究会副会長 雷坂浩之より研究協議会のまとめを行いました。

 以下、参加者からお寄せいただいた感想の一部をご紹介いたします。
【実践報告に関して】
・参加は初めてでした。今回参加して、まるで一緒に泣いたり笑ったりしてきたような一
体感を得ることができ、2学期からも自分の持ち場で頑張ろうという元気が湧いてきまし
た。
・早期支援教育の大切さ、保護者のご苦労と真摯に向き合う先生方の様子が伺えまし
た。盲ろう児や重度の児童生徒と身振りサインをどのように育むか、以前からの現場で
課題と感じていたので、参考になりました。
・早期教育相談、小学部、地域作業所という様々な場での実践を通して聞かせていただ
けて、将来まで少し見通して考えることができたような気がします。関わり、やり取りする
中で、それぞれの興味、関心に気付き、そこから一歩一歩進んでいくことの大切さを感じ
ました。

【情報提供、リレートークに関して】
・日本調剤薬株式会社の取り組み、参考になりました。社会貢献のモデルとなる素晴ら
しい活動ですね。ありがとうございます。
・日本調剤様の店舗でのチラシによる周知や市場調査、区市町村への訪問、盲ろう団
体との連携など、企業としての取り組みが素晴らしかったです。
・様々な分野で、いろいろな視点をもって、盲ろう教育に関することがすすめられている
ことを知りました。
・興味深く拝聴しました。分野が多岐にわたっており、時間があっという間に過ぎまし
た。・当事者お二人の発表が素晴らしく盲ろう児を育てる親として勇気をもらいました。
「来  
年もリレートークやりたい!」と言っていたことがとても嬉しく、来年の楽しみが一つ増え
ました。
・盲ろうのお二人からの近況報告は、とてもイキイキとされていて、楽しそうで、とても元
気になりました。これからのお二人の活躍を楽しみにしています。

 【写真はリレートークでの一場面】
  

【講演に関して】
・専門的なお話が聞け、大変勉強になりました。連携の大切さを改めて感じ、子どもを中
心としたサポートがより充実したものとなるよう、教育の現場からも、きちんと声をあげ
て、連携していくことの大切さを感じました。
・ロービジョン、医療、教育、盲ろうという幅広い分野のなかのお話しでしたが、それぞれ
のこれまでの歴史と現在の繋がり、今後に向けて、とても分かりやすく、素晴らしい内容
でした。最後にお話しがあった「関係者が集まる場」というのはとても大切だと感じまし
た。

 ご講演、実践報告、情報提供をいただきました新井氏、小北氏、村江氏、塚田氏、長
澤氏、長島氏、リレートークにおいて貴重な報告や情報提供をくださった皆様、ありがと
うございました。そして、ご参加いただいた多くの皆様、ありがとうございました。
 来年度も皆様からのご意見やご要望を踏まえながら、明日の取組の活力になるような
研究協議会を開催したいと思います。

 なお、研究協議会後に開催した第21回定期総会において、辞意を表明していた中澤惠江氏
に替わり、会長に雷坂浩之氏(現副会長)を選出しました。中澤氏には、顧問として、研究会運
営等への助言をいただくことになりました。
新しい役員体制となりますが、引き続きまして、ご理解とご協力をどうぞよろしくお願いいたしま
す。