2016年度全国盲ろう教育研究会第14回研究協議会の報告

  8月6日・7日、全国盲ろう教育研究会第14回研究協議会を国立特別支援教育総合
研究所にて開催しました。久しぶりの久里浜の海を眺めながらの研究協議会に全国か
ら70名ほどの方が参加くださいました。盲ろうの子どもたち、ボランティアさんを含めると
約100名という方々にお集まりいただきました。今回の研究協議会実施にあたりまして
は、国立特別支援教育総合研究所と筑波大学附属久里浜特別支援学校のご支援、ご
協力をいただき、快適な環境の中で研究協議会が実施でき、盲ろう児者のプログラムも
進められましたことに感謝いたします。また、盲ろう児者の活動プログラムの実施にあた
りましては、多くのボランティアの方々にご協力いただきましたこと、心よりお礼申し上げ
ます。

  以下のようなプログラムで実施しました。
【1日目 8月6日(土)】
○開会式 
○実践報告
「卒業後の生活、今とこれから」
 盲ろう児とその家族の会 ふうわ 広重 真佐子 氏       
 盲ろう児とその家族の会 ふうわ 貝嶋 敦子  氏
○ワークショップ・分科会(以下の4グループに分かれ、実施)
@盲ろう幼児児童生徒を初めて担当したあなたへ
A盲ろう擬似体験 *諸般の事情により途中からBに合流
B国立特別支援教育総合研究所生活支援棟・スヌーズレン見学
Cサポートブックをつくってみよう
    
   (今回の会場は国立特別支援教育総合研究所でした)

【2日目 8月7日(日)】 
○全国盲ろう教育研究会第14回定期総会
○講演     
「盲ろう者」取材体験記
〜盲ろう者の取材から見えた盲ろう教育の現状と課題〜
  TBSテレビ報道局 報道特集ディレクター 河北 敏之 氏 
○ポスターセッション
@盲ろう児と教室環境  
  横浜訓盲学院  後石原 恵美子 氏
AUちゃんの成長記録
  静岡県立沼津聴覚特別支援学校  廣島 順子 氏
B先天盲ろう児教育と盲ろうの歴史の探索
  元 筑波技術大学  岡本 明 氏
C卒業論文執筆中(お楽しみに!)                 
  ルーテル学院大学 森  敦史 氏 
D中途盲ろう者の語りを聞く 
   ーコミュニケーションの変容をどのように経験したかー
  東京都心身障害者福祉センター 柴崎 美穂 氏
E平成23年 生活のしづらさに関する調査
  【全国在宅障害者】における盲ろう児者の結果
  国立障害者リハビリテーションセンター研究所 北村 弥生 氏

  
                   (ポスター発表の様子)

○ワークショップ・分科会報告
・1日目の各ワークショップ・分科会の報告
・盲ろう児者の活動の様子について報告
○閉会式

【実践報告について】
 お二人の保護者からお子さんの誕生後就学前、就学時、就学後まで、その時々での
学校や家庭での様子や取組についての報告がありました。その中で、盲ろうという障害
の困難さや配慮などについての情報が把握できない中で十分な取組ができなかったこ
と、心を通わせコミュニケーションをとることの難しさとわかり合えたときの喜び・嬉しさな
どが具体的なエピソードを交えながら語られました。その後、現在の生活の様子や願い
などが語られましたが、お二人の保護者の「何歳になっても成長し続ける、成長すること
をあきらめない」という力強いメッセージは参加者に多くの感動と元気を与えるものでし
た。

    
               (実践報告2件の発表の様子)

【講演について】
 盲ろうに関する取材を続け、番組制作に関わってきた河北氏は、東京都盲ろう者友の
会の集まりに取材に行った10年前に、報道に携わるものとして盲ろうを知らなかった、視
覚と聴覚に障害のある方々が触手話、指点字など様々な方法でコミュニケーションをと
り、「他者との関わりこそが生きる喜び」と語る盲ろう者の姿に取材を続けてきたこと、た
またまいい人に巡り会った、たまたまの機会に恵まれた、というような「たまたまに委ねら
れている危うさ」を感じながら、取材を続けてきたことを映像とともに振り返られました。
そして、取材を通して感じた盲ろう児教育の課題として以下の3点をあげました。
1.盲ろう児の実態調査が行われていないので、必要な施策が打ち出せない。
2.家族も教職員もどこに相談していいのかわからないまま、困っている。
3.盲ろうの子どもを指導できる指導者がいない。養成の仕組みもない。
 また、昨年の報道特集放映後に義家文部科学副大臣が横浜訓盲学院を訪問し、盲ろ
うの子どもたちの様子をご覧になったときに、インタビューに応じた副大臣の「盲ろう児
は少数者であっても公教育として絶対に切り捨ててはならない、残念ながらその体制が
十分でない、早急に実態調査をしたい、実態把握をしないことには施策が出せないの
で、まずは実態把握から始める」との言葉が流れ、国としての取組の予定は?、障害者
差別解消施行で盲ろう教育の進展はあるのか、という問いかけがあって講演は終わりま
した。

          
   (講演時のTBSテレビ報道局 報道特集ディレクター 河北 敏之 氏)

*国立特別支援教育総合研究所として、盲ろう幼児児童生徒についての実態調査は来
年度に実施します。今年度については、盲ろうの子どもたちの実態と課題が明確にな
り、施策に生かせるような実態調査となるよう実態調査の項目を検討すること、文部科
学省や特別支援学校長会など関係機関と連絡を取り合い、実態調査実施に向け検討を
進めているところです。