海外盲ろう研究最新情報(2006年6月)

Deaf-Blind Perspectives
盲ろう展望
http://www.tr.wou.edu/tr/dbp/Article.htm

Deafblind Perspective は、アメリカのウェスタン・オレゴン大学のティーチング・リサーチ研究所
が年3回刊行している、盲ろうに関する定期刊行物です。インターネットで無料で公開しており、
誰でも読むことができます。内容は、盲ろうに関する論文、エッセー、様々なお知らせ等です。
目的は、盲ろうに関する情報を提供し、ディスカッションと分かち合いのための広場の役割を
果たすことです。想定される読者は、盲ろう当事者、家族、教師そして他のサービス提供者や
専門家です。

最新の巻から、目次(可能ならば要約)を翻訳して掲載しますので、関心があるところをのぞい
てみてください。アメリカを中心として、盲ろうにかかわる最新の研究や情報が手に入ります。
徐々に、バックナンバーをさかのぼって目次の翻訳を掲載いたします。

2006年5月 第13巻3号 
目次

Cortical Visual Impairment: Guidelines and Educational Considerations  

Susan Edelman, Peggy Lashbrook, Annette Carey, Diane Kelly, Ruth Ann King,
Christine Roman-Lantzy, and Chigee Cloninger

皮質性視覚障害―ガイドラインと教育的配慮 

Children with Usher Syndrome: Learning to Cope through Work with Mentors

Elias Kabakov and Debbie Toubi
The Center for Deaf-Blind Persons, Israel

アッシャー症候群を有する子どもたち 
-指導者との取り組みのなかでうまく対処することを学ぶ-
盲ろう者センター、イスラエル

New Master's Degree Program in Severe Disabilities with an Emphasis on Dual
Sensory Impairment in Mississippi

Cassondra Holly
Project Support Coordinator
Mississippi Deaf-Blind Project

ミシシッピー州における、二重感覚障碍に力点をおいた重度障害のための新しい修士号プログラム

Personal Perspectives  

個人的展望 

A Model for Paraprofessional Training in Deafblindness
Linda Alsop
SKI-HI Institute, Utah State University

盲ろうについてのパラプロフェッショナルのための訓練のモデル

Poem


Research Update
最新研究情報

CHARGE Development in Adolescence
Timothy S. Hartshorne
Central Michigan University

CHARGEの青少年期の発達

For your library
あなたの文庫のために

Conferences and Events
会議と催し

Announcement
お知らせ


目次の各項目の概要

皮質性視覚障害―ガイドラインと教育的配慮

皮質性視覚障害(CVI)は、西側世界における子どもにとって、視覚障害の最大の原因となって
いる(Jan, Good,&Hoyt, 2004)。ますます多くの子どもたちが皮質性視覚障害と診断されるにつ
れ(その中には多くの盲ろうの子どもが含まれる)、皮質性視覚障害およびそれがもたらす影
響について理解することの重要性と、効果的な教育的アプローチを開発することは最優先課
題となってきている。この論文の目的は、(1)皮質性視覚障害の最新の定義と解説を分かち
合うこと、(2) 多州にわたる皮質性視覚障害指導者プロジェクトが従っている教育的配慮と
特定のガイドラインを提示すること、(3)そして、皮質性視覚障害のある子どもたちのための
教育的アプローチに関する研究の課題を提案することである。


アッシャー症候群を有する子どもたち 
-メンターとの取り組みのなかでうまく対処することを学ぶ-
 
イスラエルのベス・デイビッド研究所の盲ろう者センターは、アッシャー症候群を有する子ども
たちのための革新的なプログラムを開発した。指導者とともに取り組みながら、子どもたちは
自らの診断について学び、同じ診断を受けていて成功裡にその状態にうまく対処しているモデ
ルに出会う機会が提供される。このプログラムは全国のアッシャー症候群を有する子ども全て
に開かれており、ユダヤ教、回教、キリスト教の子どもたちを含んでいる。年間40名の子どもへ
のサービスを目標としている。


ミシシッピー州における、二重感覚障碍に力点をおいた重度障害のための新しい修士
号プログラム

2004年の春、盲ろうの子どもおよび成人とかかわるミシシッピ州の教師とサービス提供者に新
しい機会が提供されることになった。南ミシシッピ大学が、テキサス工科大学と共同で、二重感
覚障害に力点をおいた重度障害についての修士号プログラムを開発した。入学希望者は、教
育あるいは関連する領域におけるに学士号をもち、重複障害のある個人にかかわる仕事に最
低2年間携わっている必要がある。このプログラムを修了した院生は、ミシシッピ州で2年間仕
事をする義務がある。このプログラムは、5年間で60名を養成することを目標として、ミシシッ
ピ州がまったく満たすことができていなかったニーズに応えるという長年の念願をかなえること
を目指している。このプログラムへはアメリカ教育省からの助成金が授与されており、学生の
学費、書籍費、旅費、および保育費用に使われる。


盲ろうについてのパラプロフェッショナルのための訓練のモデル

盲ろうの子どもと青少年との関わりにパラプロフェッショナルを使うことの増加が続いている。
2004年の「障害のある個人の教育改善法」(アメリカの障害のある個人のための法)では、特
殊教育および関連サービスの提供におけるパラプロフェッショナルの役割を認め強化してい
る。適切な訓練を受け監督を受けているパラプロフェッショナルおよびアシスタントは、障害の
ある子どもの特殊教育と関連サービスの提供を補助して良いと明記している。「一人の子ども
も置き去りにしない法」(アメリカの初等中等教育法)は、全ての生徒に資格のあるスタッフが
提供されるようにすることを義務づけている。盲ろうの子どもおよび青少年とかかわるパラプロ
フェッショナルは、研修と特別な技能が必要とされるだけでなく、パラプロフェッショナルのため
の各州の基準を満たさなければならない。盲ろうにかかわるパラプロフェッショナルのために
特に企画された就職前の養成プログラムで、州のパラプロフェッショナルの基準を満たすもの
は、現在アメリカにはない。「盲ろうパラプロフェッショナル養成全国協会は、この欠落を埋める
ために、遠隔教育モデルを提案している。


最新研究情報
CHARGEの青少年期の発達

Timothy S. Hartshorne
Central Michigan University

CHARGEという症候群が発見され、研究が始まったのはわずかこの20年である。経年とともに
成長変化していくCHARGEの子どもの健康、心理、そして行動面の課題は十分に理解されて
いない。これらの課題をよりよく理解するために、5人の専門家が結集して研究を開始した。キ
ム・ブレイク(カナダ、ノバスコシャのダルハウジー大学の臨床小児科医)、メグ・へフナー(セン
トルイス大学病院の遺伝カウンセラー、日本で4年前に講演)、ジェレミー・カーク(イギリスのバ
ーミンガム子ども病院の内分泌科医)、ジョージ・ウィリアムズ(オーストラリア・シドニーの小児
科医)そしてティモシー・ハートショーン(セントラル・ミシガン・大学のサイコロジスト)。我々はア
メリカ、カナダ、イギリス、ニュージーランドそしてオーストラリアの、9歳から21歳まで、32人の
子どものパイロット研究を行っている。研究はかなり複雑なものである。適応行動や実行機能
(思考や活動を統制し調整する認知的スキル)および活動レベル等の心理学的側面のほか
に、この研究では医療的検査と報告が含まれている。例えば、松果体の機能や骨年齢と骨密
度を見るために、血液検査を要求している。これらの情報は、CHARGEの青少年の医療的、
教育的、そして心理学的マネージメントに決定的な重要性をもつ可能性がある。この研究が終
了したあと、数年にわたる調査を行いたいと考えている。

お知らせ
アッシャー症候群のための新しいスクリーニング方法
(症状が現れる前に病気を発見するための検査)
ウィリアム・キンバリング

ボーイズタウン国立研究病院は、アッシャー症候群を検査することができる新しいツールを発
表した。このツール、USMチップはマイクロチップは、これまで知られている約420のDNAの突
然変異をチェックすることによって、既知の全てのタイプのアッシャー症候群(現在、8つがわ
かっている)を唾液サンプルによって検査することが可能である。成功率は65%から75%と
予測されており、新しい突然変異が時間とともに特定されてチップの中に組み込まれると、成
功率はさらに上がると考えられている。検査の費用は一人につき$200であるため、理想的
なスクリーニングのツールとなっている。従前の検査はシークエンシングという過程を必要とす
る検査でのみ可能で、数千ドルの費用がかかり、血液サンプルからのDNAが求められてい
た。「アッシャー症候群研究治療国立センター」はアッシャー症候群の検査に関心のある新し
い参加者を歓迎します。検査のためには、チップの購入と郵便による唾液サンプルの郵送が
必要です。検査終了後、結果は2ないし4ヶ月後に返信します。関心のある人はキンバリング博
士に直接連絡をしてください。 

William J. Kimberling, Ph.D.
Center for the Study and Treatment of Usher Syndrome
Boys Town National Research Hospital
555 N. 30th Street
Omaha, NE 68131
Phone: 402-498-6713
E-mail: kimber@boystown.org