盲ろうとは・・・

 視覚と聴覚の両方に障害を有する状態は、その特有の困難・ニーズ・文化を表現するため、
世界的に「deafblind」(「盲ろう」)として表記されるようになってきています。
 視覚と聴覚に障害をもたらす原因は、それぞれ別な場合と、同じ原因である場合がありま
す。後者で最も多い原因は、アッシャー症候群(聴覚障害に進行性の眼疾患である網膜色素
変性を伴う)と考えられていますが、学齢期にはあまり顕在化しないため、主たる在籍機関で
ある聾学校においても家庭においても見逃されやすいのが現状です。原因が特定できる場合
に多いのは、未熟児、先天性風疹症候群、CHARGE連合、サイトメガロウィルス感染症、ダウ
ン症候群、髄膜炎や事故等です。
 盲ろう児者は、視覚あるいは聴覚、もしくはその双方が残っている場合の方が多く、「盲ろう」
と云う範疇には、盲+ろう、弱視+ろう、盲+難聴、弱視+難聴の4タイプを含めています。海
外の統計から推測して、わが国には約13,000〜24,000人の盲ろう児者がいるのではな
いかと推定されています。
 このうち、盲学校、聾学校、養護学校、難聴幼児通園施設、盲幼児通園施設などに在籍して
いる幼児・児童・生徒に関しては、国立特殊教育総合研究所が過去2回の実態調査を行い、1
998年(平成10年)に実施した調査では338名が特定されています。盲ろう児は、視覚と聴
覚の他にも、様々な障害を重複していることが少なくありません。たとえば、知的障害、運動機
能障害、内臓疾患、てんかん、嗅覚や味覚の障害、皮膚感覚の麻痺などです。

 「盲ろう」とは、情報の極端な制限により、人および環境との相互交渉に著しい制限が課され
る障害のため、人間関係の育成、概念の形成、コミュニケーション方法の獲得、空間の方向
定位と移動、日常生活活動の習得、社会生活への参加、学習、余暇活動等、広範囲にわたり
重い障害をもたらします。
 盲ろうの子どもが得られる情報は、直接触れるか、残存する視覚と聴覚で把握できる限られ
た範囲にある不鮮明な情報に限られます。しかも、これらの情報は、一度に取り入れられる情
報量が極めて少なく、非常に多くの時間と集中力が摂取と処理に必要とされます。また、複数
の情報の同時摂取が困難なため、情報相互の関連性・因果関係・全体像の把握が非常に困
難になります。さらに、遠方のもの・危険物・動き・変化には直接触れることができないため、情
報として欠落してしまいます。つまり、私たちには、何気なく大量・広範囲の鮮明な情報が瞬時
に届いていても、盲ろう児者にはその大部分が届いていないことを常に意識することが盲ろう
教育には求められます。